富裕層に人気の投資対象「ヘッジファンド」とは何か

富裕層や資産家を対象にしているヘッジファンドは、一般的に認知度は低いようです。リスクが大きいと言われることもあるヘッジファンドですが、本当のところはどうなのでしょうか。ここでは、ヘッジファンドとはなにか、どのような投資手法があるのかなど、世間の声とともに紹介します。

そもそもヘッジファンドとはなにか?

リスクをヘッジ(回避)するのがヘッジファンドです。ハイリスク・ハイリターンのイメージが先行しがちですが、相場が下がった場合でもリスクを避けて投資家に利益をもたらすことを優先するファンドです。一般的な投資のように公募形式で集めるのではなく、私募形式で機関投資家や富裕層など限定し、多額の資金を集めて運用しています。投資家にとってリスクはできるだけ少ないほうが良いものですが、相場は生き物ですからリスクを回避した投資をしているつもりでも、保有している投資商品は値下がりリスクがあります。本来は資産を増やすために投資をしているはずですから、資産が目減りしては元も子もありません。このような事態を回避するための存在がヘッジファンドです。市場がどのような状況でも投資家の利益を生み出すように、さまざまな取引の手段を使って投資を行います。では、ヘッジファンドのさらなる特徴や投資手法について掘り下げて見ていきましょう。

一般的な投資信託となにが違う?ヘッジファンドの特徴とは?

投資家のステップ初期段階として人気のある投資信託も、ヘッジファンドと同様に投資の専門家にお金を預けて運用してもらいます。しかし、資金の集め方や対象となる投資家、商品、投資金額、戦略、収益目標などに違いが見られます。投資信託で対象となるのは公募により集まった一般投資家で、投資商品は株式などのいわゆる伝統的資産です。投資金額は1万円程度から可能です。一方、ヘッジファンドでは私募で集まった富裕層や機関投資家が対象で、投資商品は株式など以外に先物取引なども行うため投資戦略の自由度が高いことが特徴です。金額は一般的に数千万円単位です。そして、両者には相対収益と絶対収益という大きな違いがあります。投資信託では日経平均株価やTOPIXなどのベンチマークを上回ることを目標にしているのに対し、ヘッジファンドでは市場がどのような状態でも収益を上げる絶対収益を目標にしています。では、この絶対収益について掘り下げてみていきましょう。

ヘッジファンドの最大の特徴である「絶対収益」

相対収益の場合、たとえばベンチマークが毎日2%ずつ下がり続けている間でも、ファンドの値下がりが1%ずつで済んでいれば一応の目標は達成しているため、ファンドは一定の評価を受けます。ただし、基準価額が下がっているため投資家の資産は減っていきます。これに対してヘッジファンドでは、市場全体が上下した場合でも投資家に利益をもたらし続けることを目指します。ここで重要なのは、収益を上げることを目指すという点です。絶対収益という名前の運用方法ですから、いかにも絶対に儲かるという意味合いに捉えてしまいがちですが、投資である以上は間違いなく収益の出る投資方法はありません。また、ヘッジファンドには45日ルールというものがあると言われています。たとえば、ヘッジファンドの決算が6月と12月の年2回行われるとした場合、解約するにはそれぞれ45日前までに申し入れしなければならないというものです。これにより、ヘッジファンドでは多額の換金に備えて決算の45日前に保有銘柄を一度に売却するため、5月と11月の中旬前ごろに市場が混乱するという噂話です。たしかに、妥当性のある話にも聞こえますが、実際の解約ルールでは毎週受け付けているファンドが多くありますし、そもそも45日ルールは換金するための余裕期間であり、換金に備えて45日より前に売るというものではありません。そのため、45日ルールの影響で相場が荒れるとは言えないと考えるのが妥当でしょう。

ヘッジファンドの投資手法

結果が重要視されるのがヘッジファンドですから、その判断基準は投資家が預けた元本をどれだけ上回らせた実績があるかという部分にフォーカスされます。つまり、基準価額が上昇していれば良い運用、逆なら悪い運用ということになるため、ヘッジファンドでは主に5種類の投資手法で収益の向上を目指しています。

ロング&ショート

レバレッジを効かせて上昇が見込まれる株式を買い(ロング)、下落が見込まれる株式を空売り(ショート)する手法です。保有している銘柄の株価が値上がりすれば利益が出るのが買い(ロング)です。空売り(ショート)は、借りた株式を高い値段で売り、安い値段で買い戻して株式を返却して収益を目指します。市場全体の上下に関係なく収益を上げられる期待があるため、ヘッジファンドで中心的な存在の投資手法と言われています。

マーケットニュートラル

ロング&ショート同様の手法ですが、買いと売りの投資額を同程度にしてリスクを軽減させるのがマーケットニュートラルの特徴です。基本的な戦略としては、適正株価よりも割高になっている銘柄を空売り、割安の銘柄を買います。この状態で市場全体が値下がりした場合、適正株価よりも割高の銘柄は大幅な値下がり、割安な銘柄は小幅な値下がりに納まるのが一般的です。つまり、市場全体が大きく動いても、安定した収益を狙える手法と言えます。

イベントドリブン

規制改正による業績への影響、M&A、業務提携など業績の企業価値に影響するイベントが生じた際は、市場価格が大きく動くケースがあります。このときに、イベント後から市場に反映するまでに株価の歪み(ミスプライス)が生じます。このタイミングを投資のチャンスと捉え、歪みが解消されるまでのタイムラグを活かして収益を目指す投資方法です。

グローバルマクロ

世界中の投資可能なあらゆる商品に対して投資する手法で、金融商品の種類に制限を設けないのが特徴です。各国の政治的見通しと経済動向を重視しながら、ロングとショートを組み合わせて行います。

アービトラージ(裁定取引)

金融商品は市場ごとに価格差が生まれるケースが多くあります。ここに注目し、ひとつの商品を安価な市場で買って高価な市場で売って収益を上げるのがアービトラージの取引手法です。

ヘッジファンドが市場に与える影響やリスク

ヘッジファンドの特徴である投資自由度の高さは、市場の流動性向上に多大な影響を見せていると言われています。2つ以上の市場で行うアービトラージ、株価の歪みを活かしたイベントドリブンなどの取引で適正な価格にまとまるように促すなど、市場の効率性を高めることに貢献しています。その他、ヘッジファンドは取引回数が多く、取引金額が大きいいのが特徴であり、このニーズを満たすために市場インフラの整備が進められています。一方、リスクに目を向けると、規模の大きいヘッジファンドが破綻してしまうと、取引を行っている金融機関が損失を被るリスクが考えられます。また、取引額の大きさが市場に多大な影響を与え、急速な価格下落を招くリスクもあります。

 

世間の人はどう思う?富裕層対象と言われる「ヘッジファンド」の認知度を調べてみました!

一般の投資家にはヘッジファンドは縁遠く、未知のファンドとも言われることがあります。そこで、実際にヘッジファンドの認知度はどれくらいあるのか、どのように考えられているのかアンケートで調査してみました。

【質問】
ヘッジファンドという言葉を知っていますか?

【回答結果】
まったく知らない:50名
なんとなく知っている:44名
知っている:6名

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【調査概要】
調査地域:全国 調査
対象:年齢不問・男女
調査期間:2016年12月14日
有効回答数:100サンプル

まったく知らない人が多数!知っていても認識には違いが……

アンケートの結果『まったく知らない』と回答した方が50人で最も多い結果になりました。
・みんなが大損しても唯一儲かるという仕組みがやはり理解できません。運用するほどの資産がないのでまだ興味も沸かないです。(40代/女性/会社員)
・全く手を出したことがない投資になるので、先ずは勉強しなくてはいけない分野だと思います。(50代/男性/会社員)
資金のなさや知識不足を理由に挙げている方が多く見られました。一方、『なんとなく知っている』は44人、『知っている』は6人という結果です。
・金持ちや金融機関が相手にするものであって、一般庶民の個人では太刀打ちできない。(40代/男性/会社員)
・好景気、不景気に関係なく、常に利益を出すことができるので、腕の良い専門家に頼めば、確実に資産を増やすことができる印象を受けた。(40代/男性/会社員)
人それぞれで思うところは違うようで、知っている人の中でも捉え方は異なることが分かりました。

ヘッジファンドに対する認識の違いに大きな開きがあることがうかがえる内容でした。富裕層相手の投資商品であるだけに、一般投資家にとってはヴェールに包まれた存在のように感じてしまうのかもしれません。

 

まとめ

投資は100%儲かるものではありませんが、富裕層に人気のヘッジファンドでは、投資で常勝を目指すことを目的にレバレッジを効かせてさまざまな方法で運用されています。日本国内では決して認知度が高くない投資手段ですが、世界的には広く知られているヘッジファンド、この機会に前向きに考えてみてはいかがでしょうか。

 

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